アシックス創業者・鬼塚喜八郎氏に学ぶ「頂上作戦」と経営の本質
先日、アシックスの創業者である鬼塚喜八郎氏の自伝『敗れてもまた走れ』を読みました。
今や世界中にその名を知られるスポーツシューズメーカー「アシックス」ですが、実は創業者である鬼塚氏が鳥取市松上出身であり、鳥取第一中学校(現在の鳥取西高校)の卒業生であることは、意外と知られていないかもしれません。私自身も恥ずかしながら深くは知らなかったのですが、同郷の大先輩が世界企業を打ち立てた足跡を知り、胸が熱くなる思いがしました。
鬼塚氏は先の大戦を陸軍将校として迎え、敗戦後の混乱した闇市を目の当たりにする中で、「健全な身体に健全な精神があれかし」という理念を抱き、スポーツシューズづくりへと踏み出します。
しかし、その後の歩みは決して平坦なものではありませんでした。
- 欧州の巨頭との対峙(アディダスやプーマとの熾烈な市場競争)
- かつてのパートナーとの死闘(販売代理店だったナイキのフィル・ナイト氏との裁判闘争や「エア」の衝撃)
- 技術革新との戦い(近年の箱根駅伝でも話題となった「厚底シューズ」の衝撃)
まさに山あり谷ありの連続であり、スポーツビジネスのダイナミックな歴史そのものでした。
特に経営者として深く考えさせられたのが、「プロダクトアウト」と「マーケットイン」の関係です。
一時、市場のニーズを汲み取るマーケットインの手法をとるナイキに対して、製品開発主導のプロダクトアウトであったアシックスが劣勢に立たされる場面がありました。しかし、鬼塚氏はそこで折れることなく、「頂上作戦」で巻き返していきます。
成績のために一切の妥協を許さないトップアスリートの厳しい要望に徹底的に応え、極上の製品を作り上げる。その製品が世界のトップで評価されれば、彼らに憧れる一般の消費者やランナーにも自ずと広がっていく——。
一市民ランナーとしてシューズを選ぶ立場からも非常に共感できる戦略ですし、「徹底的に品質を極めるプロダクトアウトは、正しい情熱と戦略を伴えば決して市場に負けない」という強い勇気をもらいました。
また、旧日本軍の失敗談から得た「負ける戦はしない」という教訓や、本書の締めくくりにある「何のためにこの会社が存在しているのか?」という問いかけには、経営者としてハッとさせられ、思わず身が引き締まりました。
企業の規模こそ違えど、経営の本質や「自社の存在意義」を問い直す上で、これ以上ない一冊となりました。
地元・鳥取が生んだ偉大な実業家の生き様と熱い信念を胸に、私も自社の存在意義を追求し、どんな山や谷があっても愚直に走り続けていきたいと思います。
